Deleteキーの勇気

ソフトウェア開発は、膨大な「成果物」を生み出す営みです。プログラムコードという最終成果物だけでなく、アジャイルならEpicやUser Story、Task、issueなどのワークアイテムが、ウォーターフォールならもっと多く、要件定義書、設計書、テスト仕様書といった中間成果物が次々と生成されます。議事録、工程表、課題リストなども加わり、まさに「ドキュメントの山」が築かれていきます。

「目標を達成できるのであれば、ドキュメントは少ないほど生産性が高い」

それは、ドキュメントを作成や更新にかかる手間だけでなく、それを読む人の時間や労力も決して小さくないコストだからです。さらに、無駄な記述の多いドキュメントは、その中から必要な情報を取り出すのも難しくなります。

では、どうすればドキュメントを減らせるのか? …答えは2つあります。

1つは不必要なものは最初から作らないこと。誰にとっても役に立たないドキュメントは作成しない、作るとしても意味のあることだけを書くという姿勢が重要です。

もう1つは、役目を終えたら削除すること。ドキュメントは積算で増えていきますが、古くなったドキュメントを律儀に更新し続けるのは非効率です。もう使われていない、内容が陳腐化したといった誰も読んでいないドキュメントは潔く削除しましょう。ロケットは、打ち上げ過程で役目を終えたブースターを次々と切り離しますが、それと同じようにドキュメントも役目が終わるのです。

ここで必要なのが「deleteキーを押す勇気」です。それは自分書いた文書に限りません。チームの誰かが作ったドキュメントでも、「もう、これ読まないよな」「内容が古いから読まない方がいい」と判断したものは遠慮なく削除しましょう(エンジニアという職種の人はこれが苦手です)。ソフトウェア開発においても、製造業で重視される「5S」の精神は有効です。物理的なものだけでなく情報においても整理整頓がチームの生産性に大きく関わるのです。